Google検索がいらなくなるとき

かつてサン・マイクロシステムズのCTO、グレッグ・パパドポラスは「世界にコンピューターは5つあればいい」(The World Needs Only Five Computers)と言ったそうだ。

1つはグーグル。もう1つはヤフー。それにアマゾン、マイクロソフトのlive.com、セールスフォース、イーベイあたりを加えれば、もうほかに地球上にコンピュータなど不要になるだろう、というのがパパドポラス氏の主張だ。(@IT「世界に“コンピュータ”は5つあれば足りる」)
http://www.atmarkit.co.jp/news/analysis/200707/30/computers.html

パパドポラスが言うのは基幹的なシステムだが、私のウェブサイト不要論も発想は同じである。それぞれが同じようなことを別々にするのは明らかに非効率だし、情報として使いにくい。いまはバラバラの情報をGoogleが検索エンジンで束ねている状況だが、現在でも、何かを買おうと思ったらGoogleの検索窓ではなく、楽天やAmazonの検索窓を使うだろう。すべての情報を検索エンジンで探すのは、ムリがあるのだ。世界に散らばるウェブサイトがどんどん集約されていき、ショッピング、ニュース、スポーツ、エンターテイメント、学術など、大きなカテゴリでプラットフォームが出きてしまえば、そのときにはもはやGoogleは必要なくなるのではないか。

大学統合ウェブサイト試案

数年前に会社で「ラボラトリーズ」という商品をリリースした。大学の研究室向けに作ったCMS(サイト管理システム)で、研究室のウェブサイトとして最低限必要な研究テーマ、研究業績、スタッフ紹介などはデフォルトで入力フォーマットが用意されており、そこに入力すれば最低限のサイトが簡単に公開できるというものだ。

大学研究室・ゼミのポータルサイト「ラボラトリーズ」

大学のウェブサイトというのは、大学本体、学部・学科はそれぞれ広報予算で作られるが、研究室については、それぞれの研究予算から捻出して作られることが多い。そうすると当然、作るところと作らないところが出てくるし、作ったものもデザインと内容はバラバラで、ユーザー側からするととても不便だ。ためしに、どこかの大学の各研究室でどういう研究をしているのか見てみるといいが、まず研究室のサイトがどこにあるか見つけることから苦労するだろう。学部・学会からリンクされていることもあるし、研究者データベースからリンクされているところもある。また、見つけたとしても、情報は集約されておらず、何百もあったとすると、全体をざっと把握するのに何時間かかるかわからない。そういう状況なのだ。

この「ラボラトリーズ」というのは、たんにウェブサイトが簡単に作れるというだけではなく、情報を集約することができるので、それぞれのニュースをまとめて時系列で表示したり、研究テーマだけを抜き出したりすることが可能だ。

で、当初の構想としては、大学内の研究室をまとめるだけではなく、全国のすべての研究室をまとめたいと思っていた。そうすれば、どういう研究がどこの大学で行われているのか、似たような研究をしている研究者はいるのか、などがわかるようになる。だけど、ビジネス的な理由から、この構想は頓挫してしまった。だけど、システムとしてはいまも有効だし、利用してもらっている研究室もたくさんある。

さて、このアイディアは、研究室だけではなく、大学全体でも使えるものだと思っている。文部科学省が「ユニバーシティーズ」のようなプラットフォームを立ち上げて、すべての大学のウェブサイトを統合してしまうのだ。各大学の広報予算も削減できるし、事務コストも下がるだろう。もちろんユーザーにとってもメリットは大きいだろう。

誰でもウェブサイト作らなければいけない不健全な社会

ウェブサイトを作る仕事をしているのに、というより、しているからこそ思う。なぜみんなウェブサイトを作らなければいけないのか、と。企業も、飲食店も、自治体も、団体も、大学も、高校も、中学校も、小学校も、幼稚園・保育園も、病院も、テレビ局も、新聞も、政治家も、タレントも、個人も、みんな、ウェブサイトを作っている。この不健全さを指摘する人はあまりいない。なぜカレー屋の主人が本で勉強してウェブサイトを作らなければいけないのだろう。そんな余裕があるなら、カレーにその力を使ってほしい。なぜ企業が何百万円もかけてウェブサイトを作らなければいけないのだろう。その費用は製品やサービスの価格に転嫁される。なぜ政府機関や国立の機関が何千万円もの予算をかけてウェブサイトを作らなければいけないのだろう。その財源は税金である。ウェブサイトを作る仕事をしている立場からすれば大歓迎な風潮だけど、でもこれは明らかに不健全な社会だと思う。

ウェブサイト不要論というのは、ウェブサイトが必要ないということではない。限りなく少なくしたほうがいい、という考え方だ。たとえば大学なら、文部科学省が大きなウェブサイトを作って、プラットフォームの中で各大学が情報発信をすればいい。飲食店なら、Google+でもFacebookでもいいけど、どこかのプラットフォームで情報発信をすればいい。その方がユーザーとしても、絶対に見やすいし、使いやすいはずだ。もちろん、個性を出さなければいけないアーティストなんかは作ったほうがいいだろう。これはあくまで最小にした方がいいという考え方だ。